オフコンや汎用機からオープンシステムへ移行(マイグレーション)する場合や、システムの見直しをする場合に、基幹システムの機能をもう一度確認しておくことは、有用なことです。
コンピュータシステムの基盤である基幹システム(ERPシステム)とは、なにか、ここでは、基幹システム(ERPシステム)の機能のひとつである物流システムについて、3つの主な機能をご説明します。(2024年03月28日更新)
基幹システム(ERPシステム)のひとつである物流システムの機能は、大きく3つに分けることができます。
⇒在庫管理
⇒指示・実績管理
⇒商品管理
注:ここでは、配送・運送等の車による商品の輸送部分は、含まれていません
在庫管理
商品の在庫の情報(商品の存在する場所、商品が入ってきた日時、商品が出た日時あるいは、廃棄した日時・理由など。)を管理します。
ロケーション管理(場所・棚管理)
商品の在庫の存在する場所を管理します。棚を使用して商品を置くのであれば、それぞれの棚に番号(棚番)を割り当て、棚番を使って管理をします。
おおよその場所を管理するのであれば、在庫の存在する場所をいくつかの区域に分け、区域毎に区域の番号を割り当て、区域番号管理をします。
棚番管理と区域管理を組み合わせる管理もあります。
マテハン機器の進歩により、某物流センターのように、自動的に棚が移動する例も出てきました。
また、在庫のある棚番のランプを点灯させて、作業者がピッキングしやすいように在庫場所を知らせる例もあります。
商品をピッキングする場合は、棚番のバーコードをハンディターミナルで読み取り、商品のバーコードを読むことによりピッキングしたことを管理します。
ハンディターミナルのバーコードリーダーは、ある程度の距離があっても、バーコードを読み取る必要があります。
バーコードリーダーは、作業者が持つものやフォークリフトなどに備え付けるかたち、また一か所に固定する場合もあります。
棚卸
棚卸日、在庫場所・ロケーション毎に、商品の在庫数を実地で確認し、商品の在庫状態を確定させます。
商品の状態を確認し把握します。状態の悪い商品は、解体・廃棄などに回します。
管理データ:棚卸日・棚卸場所・商品・数量・状態 など
指示・実績管理
商品を移動させる指示情報をもとに、実際に商品を移動させた実績情報を管理します。また、指示情報と実績情報の差異情報を管理します。
ここでは、他社から商品の入ってくることを入荷、他社へ商品が出ていくことを出荷と表現することにします。また、自社内の移動で、自社内のある場所へ商品が入ってくることを入庫、自社のある場所から商品が出ていくことを出庫と表現することにします。
入荷指示・入荷実績
仕入先からの商品の入荷予定情報をもとにして入荷指示情報を作成し、実際の商品の入荷の実績を管理します。入荷予定情報は、発注先への発注情報や仕入先からの商品の入荷予定情報になります。
管理データ:入荷日・仕入先・入荷場所・商品・数量 など
入荷指示情報と入荷実績情報の差異情報を管理します。
入庫指示・入庫実績
仕入先からの商品の入荷予定情報または他在庫場所からの入庫指示情報をもとにして、実際の商品の入庫の実績を管理します。入庫指示情報は、在庫場所から出庫指示情報と兼ねることがあります。
管理データ:入庫日・入庫場所・出庫場所・商品・数量・入庫棚番 など
入庫指示情報と入庫実績情報の差異情報を管理します。
出庫指示・出庫実績
在庫場所から出庫指示情報をもとにして、実際の商品の出庫の実績を管理します。
管理データ:出庫日・出庫場所・入庫場所・商品・数量・出庫棚番 など
出庫指示情報と出庫実績情報の差異情報を管理します。
出荷指示・出荷実績
得意先への出荷予定情報をもとにして出荷指示情報を作成し、実際の商品の出荷の実績を管理します。出荷予定情報は、得意先への売上情報の場合もあります。
管理データ:出荷日・出荷場所・得意先・商品・数量 など
出荷指示情報と出荷実績情報の差異情報を管理します。
流通加工指示・流通加工実績
外装など流通に伴う些少な加工を流通加工と呼びますが、流通加工指示をもとにして、商品の流通加工実績を管理します。
管理データ:流通加工日・得意先・商品・数量・原材料 など
流通加工指示情報と流通加工実績情報の差異情報を管理します。
その他
運輸貨物業や配送業務を行う企業では、貨物追跡として、貨物(荷物)の現在位置を照会できるようにしているシステムもあります。
商品管理
商品自体の情報である原材料や商品の情報(生産(加工)者・生産(加工)日・生産(加工)場所・消費期限・賞味期限 など)の商品の情報を管理します。
商品を判別するために、商品にバーコードが印字されていたり、バーコードが印字されたラベルが添付されています。
基幹システムでは、各データをコードのみで入力するために、マスタを作成します。たとえば、商品の名称などを何度も入力することは煩雑なので、商品に独自コードを付番し、マスタ化します。
得意先マスタ 得意先コード・得意先名称・住所・・・・
仕入先マスタ 仕入先コード・仕入先名称・住所・・・・
商品マスタ 商品コード・商品名称・販売単価・・・・
倉庫マスタ 倉庫コード・倉庫名称・・・・・
担当者マスタ 担当者コード・担当者名称・部門・・・・
部門マスタ 部門コード・部門名称・・・・
etc・・・・
最後に
物流システムは、商品が滞りなく効率良く流れるように管理することが主目的です。商品の流れが滞り、無駄な時間が発生したり、間違った商品を納品していては、取引先の信用も落ちてしまいます。
しかし、物流システムをうまく活用することにより、商品をスムーズに流すことができれば、物流コストを下げることも可能です。
注:ERPは、本来、情報の一元化やリアルタイムな経営の材料を提供する計画であり、基幹システムは、ERPを実現するシステムの一部分になります。ここでは、説明を簡略化するため基幹システムと同義語として扱っています